大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)274号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取り消すべき違法の点が存するかどうかについて検討する。

前示のとおり当事者間に争いのない審決理由の要旨によれば、審決が、各引用例に記載されている焼鈍炉をもつて、バツチタイプのカバー型炉と、台車搬送方式の連続型炉の二種に区分されるとし、マツフルを用いるものは前者に限られ、後者にあつてはマツフルを用いることなくラジアントチユーブ又は電気加熱方式が採用されているとの前提に立つて、第一引用例記載のものは前者に属するとしたうえ、右のとおりに区分した二類型のものとのみ対比することによつて本件発明の各引用例に記載されたものと比較しての新規性、進歩性の判断をしていることは明らかである。しかして、審決は、右のような判断の枠組みにおいて、本件発明が、前者のバツチタイプのカバー型炉に対しては台車を用い、しかも、コイル状材料を数段に積載していることを、後者の連続型炉に対してはマツフルを用いて直火式間接加熱方式を採つたことをもつて、容易に発明をすることができないとする根拠としているものである。

しかしながら、第一引用例(成立について争いのない甲第三号証)には、回転炉床式の連続型炉でマツフルを用いて焼鈍を行うものが記載されている(マツフルを用いる連続型炉が記載されていることは当事者間に争いがない。)のであつて、これが審決のなした前示二区分のいずれにも属さないことは明らかである。してみれば、本件発明が容易に発明をすることができないとする根拠として審決が挙げる事由は、第一引用例にマツフルを用いた連続型炉による焼鈍方法が記載されている以上、これがそのまま妥当し得ないことは明らかであり、第一引用例との対比ではいかなる点がなお本件発明の新規性、進歩性の根拠として存続するかどうかを検討する必要があるところ、もとより審決はこの点についてなんら判断を示していない。

したがつて、審決は、本件発明との対比に当たり第一引用例の記載を誤認して判断した違法があり、取消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由があるのでこれを認容する。

〔編註〕 本件特許発明に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

被告らは、名称を「金属ストリツプコイルの連続焼鈍方法及び装置」とする発明についての登録第九二九四八四号特許(昭和四七年一二月二七日の特許出願に基づき、昭和五三年一〇月一七日に登録されたもの。以下「本件特許」といい、その願書に添付された明細書の特許請求の範囲の第一項に記載された発明を「本件発明」という。)の共同特許権者である。

原告は、昭和五五年一〇月一六日、本件特許を本件発明について無効とすることについて審判を請求したが、昭和五五年審判第一八八二〇号事件として審理された結果、昭和五七年九月三〇日、右審判の請求は成り立たないとの審決があり、その謄本は、同年一一月二九日、原告に送達された。

二 本件発明の要旨

台車上にコイル状材料を数段積載し、その上からマツフルを被せた後、マツフル内に雰囲気ガスを導入し、前記台車を一ピツチずつ順次移送しながら前記マツフル外から火焔を接触し加熱し、次いで冷却帯を通過させることにより、金属ストリツプをコイル状のまま連続して熱処理する方法。

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